土地・不動産相続に必要な手続きと期限

2022年02月21日

土地やマンション・一戸建てなどの建物を所有する親や祖父母が亡くなった場合、相続の手続きが発生します。もともとの登録名義人である被相続人から、相続人へと名義を変えなくてはなりません。所有権移転登記を法務局に申請する相続登記と呼ばれる手続きです。相続手続きについては、「当事者の任意」に任せられていたため、法的な期限が設定されていませんでした。

ですが、所有者不明土地の増加が問題となったことから民事基本法が見直され、不動産登記や住所等変更登記が2024年より義務化され相続から3年以内の手続きが必要となります。この義務化は2024年4月1日からですが、過去に相続をして登記変更をしていない人も罰則の対象となることに注意が必要です。まだ先のことと考えず、早急に手続きを考えましょう。

ここでは相続した不動産の名義変更や、相続不動産の売却時に必要な手続きを後回しにすることで起きるデメリットを見ていきましょう。

【結論】土地・不動産相続は義務化となるため早急な手続きが必須!

土地・不動産相続に必要な手続きに期限はない!土地・不動産の所有者が亡くなった場合、所有不動産の登記名義人を相続人に名義変更する手続きが必要です。これまでは相続の当事者の任意に任されていたため、相続人が複数いる場合などは手続きが放置されることが多くありました。

しかし2024年からの登記変更等の変更の義務化を踏まえ、手続きをしておくことをおすすめします。ただ、様々な事情から簡単に手続きができないとお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。事情をそのままにしておくことでどんなことが起きてしまうのかを詳しくご説明します。

手続きを放っておくべきではない5つの理由

今ほど説明したとおり、不動産登記や住所等変更登記が2024年より義務化され相続から3年以内の手続きが必要となります。また、相続した不動産の売却や担保にしたローンを考えているなどのケースでは、所有者を明らかにしておかなければなりません。不動産の名義変更を行わずとも、相続は発生します。必要な手続きをせず放置しておけば、相続はどんどん複雑になりトラブルの原因となる可能性も高まります。不動産相続手続きを速やかに行うべき理由を以下5つの観点から解説します。

1不動産の売却や担保設定ができないから

不動産の売却や担保設定ができないから仮に土地・不動産の所有者である親や親や祖父母が亡くなり、相続が発生してもすぐに相続登記の手続きを行わなかったとします。当然、土地・不動産の名義人は亡くなってしまった被相続人のままです。相続した人のものではなく、他人のものと判断されます。つまり、被相続人名義のままでは不動産を売却できないのです。土地や不動産の担保設定についても同様です。

一方で、相続しても売却する予定がないという方もいらっしゃるかもしれません。それでも2024年からの不動産登記制度の見直しにより、相続登記の申請は義務化されます。取得を知ってから3年以内の相続登記の手続きが必要となることに加え、次世代に円滑に不動産の相続、売却等を引き継ぐためにも放置することは望ましくありません。

2権利関係が複雑になってしまうから

権利関係が複雑になってしまうから相続が発生してもそのままにしておくと、相続人全員が土地や不動産の所有者、かつ共有財産のままになってしまいます。もし、相続手続きをしないまま相続人の誰かが亡くなってしまうと、相続人がさらに増え、権利関係が一層複雑になってしまうのです。3年以内の義務化といっても、その間に何も起こらないという保証はどこにもありません。

交流のない遠い親戚と財産を共有することになるわけですから、申請に必要な書類を揃えるだけでも手間がかかります。相続人同士で会ったり連絡をしたりするのも容易ではありません。万が一罰則対象となった場合にはトラブルになる可能性もあります。無用なトラブルを回避するためにも相続登記は速やかに行う必要があります。

3相続人が認知症等になった場合、遺産相続が困難になってしまうから

相続人が認知症等になった場合、遺産相続が困難になってしまうから相続をはじめ、法的に必要な手続きを行うには、本人の意思や判断能力が大きな意味を持ちます。例えば認知症などの疾患で判断能力が不十分だと見なされれば、法律行為を行えないからです。意思能力が不十分で判断が難しい相続人は、遺産分割や相続登記などに関与することができません。認知症の相続人が参加したとしても正式な法律行為と認められないのです。相続人が認知症を患っている際には、遺産分割協議においても成年後見人をつける必要があります。成年後見人の選任には時間がかかりますから、不動産の売却などがすぐに行えないリスクも考えられます。

また成年後見人は認知症の相続人の権利を守る立場から、法定相続分は死守するでしょう。他の相続人と主張が対立し、争いの原因にもなりかねません。高齢化社会が進展する今、相続人の意思確認が明確な内に手続きをすすめる利点は大きいのです。

4相続人の債権者に差し押さえられる場合があるから

相続人の債権者に差し押さえられる場合があるから

借金と住宅

自分以外の相続人の中に、借金などの債務者がいる可能性がある際は特に気をつける必要があります。相続した土地や不動産が財産と見なされ、差し押さられてしまうからです。債権者には、債権を回収、保全する権利が認められています。そのため、相続人に代わって相続財産を回収する権利があることになります。

さらに、債務者の相続財産の登記(代位登記)もできるのです。相続登記がなされなければ、土地や不動産などはそれぞれの相続人の共有財産となります。つまり債務者が借金を返さなければ、相続財産を自由にできず、債権者の名義のままになってしまいます。

5必要書類を入手することが困難になってしまう場合があるから

必要書類を入手することが困難になってしまう場合があるから相続登記申請には、さまざまな書類を提出しなければなりません。亡くなった方の住民票(除票)または戸籍の附票もその1つです。故人の住民票や戸籍謄本などは保管期限が定められています。住民票(抹消された住民票である除票)の保管期限は5年、戸籍謄本の保管期限は150年(平成22年の戸籍法が改正前は80年)です。

また婚姻や死亡などの届出が行われて除籍となった戸籍や原戸籍の場合、附票の保存期間は5年間となっていました。ですが令和元年6月20日から保存期間が150年となりました。ただ、平成26年3月31日までに保存期間が経過したものは廃棄されている可能性が高くなります。(戸籍法は何度か改正され、その際に都度書き換えられます。その書き換えの際に古い情報が記載されません。書き換えの前の戸籍を原戸籍といいます)。ですから、保存期限が過ぎれば必要書類が入手できず、土地や建物の相続手続きに手間や時間を要するリスクが高まるわけです。

それでは土地・不動産相続に必要な手続きとは?順を追って説明します

期限はないものの、土地・不動産相続の手続きを迅速に進めるべき理由をお伝えしてきました。次に土地・不動産相続手続きの大まかな流れについて順を追って説明します。また土地・不動産相続の手続きや申請の際には、多くの提出書類を用意する必要があります。

まずどのような手続きと書類を用意をしなければならないのでしょうか。申請の提出期限と合わせてぜひ参考にしてください。

その1死亡届を提出する(7日以内)

死亡届を提出する公に「人が亡くなった」事実を証明するために提出するのが死亡届です。被相続人の死亡の事実を知った日から7日以内に届出する必要があります。提出先は亡くなった場所、死亡した人の本籍地、届出人の住民登録地のうちいずれかの市区町村役場に行います。提出者は同居の親族もしくはその他の同居者、家主、地主又は家屋など土地の管理人が提出することが義務づけられています。

また届け出の際、病院などでの死亡診断書または死体検案書も必要です。これはほとんどの場合、死亡届とセットになっています。病院などが死亡診断書部分を、死亡届の欄を届出人が記入します。死亡届の原本は、以後返却されません。生命保険金の取得の手続きなどで必要になるケースもありますので、原本は複数枚コピーを取っておくといいでしょう。

その2遺言書があるかどうかの確認をする

死亡した被相続人が遺言書を残しているかいないかの確認は、土地・不動産相続手続きの流れに大きく影響します。遺言書の有無によって、相続人や相続登記についての手続き異なってくるからです。 遺言書を公正証書で残している可能性があれば、遺言検索システムを用いて公証役場で調べることも可能です。

また被相続人が自ら書いた遺言書が残されている場合も考えられます。このような自筆証書遺言が発見されたら、家庭裁判所での検認申し立てを行わなければなりません。検認によって、遺言書の偽造や書き換えのおそれのない「正式な」遺言書と認められます。

その3戸籍謄本を取得する

相続人が不明では、土地・不動産相続手続きに必要な遺産分割や相続登記が行えません。誰が相続するのかを確認するために被相続人の戸籍謄本をたどる必要があります。被相続人の出生から死亡まですべてがわかる戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本などを入手します。場合によっては被相続人の現住所ではなく、出生地など本籍地の市区町村役場へ問い合わせなくてはならないでしょう。

近しい親族が知らなかった相続人がいる可能性もありますから、戸籍謄本の取得は土地・不動産相続手続きにおいて大きな意味を持つのです。加えて相続人の権利と持つ証として法定相続人全員の戸籍謄本も取り寄せます。また、相続人全員の戸籍謄本は被相続人が死亡した後の日付でなければなりません。

その4遺産分割協議書を作成する

相続人が判明したら、亡くなった被相続人の財産の中で、誰がどの財産をどのくらい相続するのかを決める遺産分割協議を行います。遺産分割協議には、相続人すべてが参加し、土地・不動産以外の財産も含めて相続分割とその割合について決定します。その内容を遺産分割協議書として文書としてまとめます。相続人全員の意思が反映されているという意味から、相続人全員の署名、実印押印が必要です。当然ながら印鑑証明書の用意も必要です。

遺産分割協議書は相続人全員がそれぞれ所持します。遺産分割協議書を作成後に内容の変更を希望する場合、相続人全員の合意を得なければなりません。後々トラブルがないよう、慎重に作成しましょう。

その5必要書類を取得・作成する

不動産登記の申請書類を作成し、管轄の法務局へ申請を行います。法務局への申請は書面の他、オンライン申請も可能です。その他、ケースバイケースではありますが、以下のような書類があればスムーズに手続きが行えます。

  • 相続人全員の戸籍謄本、出生から死亡までの被相続人の戸籍謄本
  • 名義変更する年度の固定資産評価証明書(登録免許税額の確認)
  • 遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書
  • 遺言書(ある場合)
  • 相続人の住民票
  • 登記事項証明書、登記簿謄本(被相続人名義の不動産の特定)
  • 相続関係説明図(戸籍謄本などの原本の返却を希望する際)
  • 不在籍証明書、不在住証明書(住民票等の証明書類が取得できない場合)

【番外編】土地・不動産相続に必要な書類をまとめて紹介!

土地・不動産相続手続きには、多岐にわたる書類が必要になります。市区町村役場や法務局などでの申請が必要なものが多く、入手には時間を要するものがほとんどです。また必ず必要な書類と相続のパターンによっては用意すべき書類に区別されます。用意すべき書類、場合によっては必要な書類にわけて簡単にご紹介します。しっかり確認し、取得には時間に余裕を持つことを頭に入れておきましょう。

必要な書類

故人の戸籍謄本、住民票の除票

亡くなった被相続人が生まれてから死亡するまでの履歴がすべてわかる戸籍謄本が必要です。 また死亡した際に住所があった市区町村の住民票の除票も取得します。除票とは、死亡届が提出されるなどで住民登録が抹消されてる住民票のことです。

相続人の戸籍謄本、住民票

不動産や土地を相続する権利を持つ相続人全員の戸籍謄本と住民票も入手します。 戸籍謄本は出生や婚姻、親族関係が記録されている書類です。住民票は氏名・住所等の事項が記載されている書類で、居住地の市区町村役場に申請し、写しを入手できます。戸籍謄本は本籍地でなければ入手できませんから、注意が必要です。

相続人のマイナンバーカード

相続財産を取得した際には、相続税を申告しなければなりません。相続税申告時に本人確認の意味を持つマイナンバーを記載しなければなりません。カードを入手するにはあらかじめ申請しておく必要があります。郵送やパソコン、スマートフォン、証明用写真機から申請可能です。

相続人の本人確認書類

本人であることを証明できる書類として運転免許証やパスポート、各種福祉手帳などが必要です。相続税の申告では、マイナンバーを確認できる書類(マイナンバー通知時の書類)に加えて本人確認書類を記載します。

固定資産評価証明書

土地や建物などの固定資産税についての評価額を示した証明書です。名義変更の際には被相続人が亡くなった年度ではなく、最新年度のものを用意します。相続税の申告では、被相続人の亡くなった年度の固定資産評価証明書が必要です。不動産所在地の市区町村役場の窓口で入手可能です。

それぞれの状況によって必要になる書類

遺産分割協議書

相続人が複数存在する場合、遺産分割協議を行い誰がどのくらい、何を相続するのかを取り決めます。相続人全員の合意のもと、その内容をまとめて遺産分割協議書を作成します。相続人全員の実印の押印、印鑑証明書の添付も必要です。

相続人の印鑑証明書

印鑑を市区町村に登録し、公に自分のものであると示すのが印鑑証明書です。相続において重要な書類である遺産分割協議書や相続税の申告など、さまざまな場面で実印を押印しなければなりません。印鑑証明書は実印とセットで用意する必要があります。

相続関係説明図

相続関係説明図は、被相続人を中心に、相続人や続柄を示した家系図に似たものです。作成し、被相続人の出生から死亡まですべてがわかる戸籍謄本、相続人の戸籍謄本などを添えて管轄する法務局へ提出します。相続人の数や関係性が図としてわかりやすく、登記申請の際に提出すれば戸籍謄本等の原本を返却してもらえます。

不在籍証明書、不在住証明書

保存期限の関係で場合によっては、住民票や戸籍の附票の入手が難しいケースがあります。その代わりの証明書として不在住証明または不在籍証明を提出で対応可能な可能性があります。申請日現在時点で、申請された住所・氏名が一致する住民票、除票、改製原住民票が存在しないことを証明します。

登記済権利証

土地の所有者確認の際、持ち主である証明書となるのが登記済権利証です。土地を取得し、登記終了の際に発行されていたものです。なお平成18年以降は電子データの登記識別情報として登録されています。住民票等の証明書類提出が難しい場合に提出します。

上申書

戸籍謄本や住民票などが入手できず、相続登記で必要な事項が証明できない場合に提出するのが上申書です。戸籍が存在しなかったり、最後の居住地が不明な場合だったり、登記簿上の名義人と被相続人が完全に一致しなかったりするケースなどで用います。相続人すべての署名と実印押印の上、印鑑証明書を添付して提出します。

土地・不動産を分割相続する4つの方法とは?

被相続人が亡くなり、相続する人が単独であれば話はシンプルです。ただほとんどの場合、複数の相続人が存在します。土地不動産は現金のようにきっちり分けることが難しい財産でもあります。実際に土地・不動産を複数人で相続するとしたら、どのような手続きが必要なのでしょうか。土地・不動産を分割相続するための4つの方法について具体的に解説します。

現物分割

現物分割は一番わかりやすく、簡易な分け方です。相続した土地を分割して等分し、複数に分ける分筆も現物分割に含まれます。分筆した土地をそれぞれの相続人が現物として相続します。広い土地であれば、資産として土地を公平に相続できる点は利点でしょう。一方、分筆が難しい土地や狭い場所、条件によっては不公平感が生じる場合も出てきます。分筆が難しかったり、土地の税金が高くなったりなどのデメリットもあります。

代償分割

複数の相続人の一人が代表して不動産を相続し、相続分の代償となる現金などで支払う方法が代償分割です。土地の分筆が難しいケースや現金での相続を希望する相続人がいる場合に適している方法です。不動産など現物を取得した相続人の経済的負担が大きく、資金力のある相続人がいる場合に有効な方法です。また相続人全員の同意がなければ、代償金の算出方法で揉めるリスクも考えられます。

換価分割

換価分割とは、相続した土地を売却し、得た現金を複数の相続人で分ける相続方法です。売却金を公平に分割して相続できる公平な分割方法でもあります。また代償分割に比べ、相続人に資金力がなくても現金として分けることが可能です。ただ不動産や土地に売却手続きには時間も手間もかかります。相続人皆が売却額に納得しなければ売れません。場合によってはなかなか買い手がつかなかったり、安い値段でしか売れなかったりするリスクもあります。

共有

被相続人から相続した不動産を相続人複数で所有する相続方法が共有です。明確に分割するのが難しい不動産を公平に所有する点で公平感はあります。けれども、管理方法や売却の方針が所有者同士で異なればトラブルに発展する可能性もあります。売却を希望する場合も、所有者全員の同意が必要になります。また子や孫など代替わりのたびに共有者が増えるリスクも考慮に入れておきましょう。

まとめ

土地や不動産の相続には、さまざまな手続きが必要です。また相続登記には必要な書類が多く、書類の入手だけで時間を要します。遺産の分割や登記、相続税の申告など専門的な知識も不可欠で、すべてを網羅するのは難しいのが現状です。家族間のトラブルが「争続」につながることもあり、適切に対処しなければ子どもや孫の代まで続く可能性も否めません。

また2024年4月からは相続登記が義務化されますので、罰則の対象となることのないよう相続人となった時点で速やかな手続きをすることも必要となります。

S.K.Y.司法書士事務所では、相続手続きの豊富な経験を持つ専門家が相続についてトータルにお手伝いさせていただきます。皆さんの日々の困りごとに寄り添い、笑顔のもと安心して生活できる身近な法律家でありたいと思っています。土地や不動産のことで気になることがあれば気軽にお問い合わせください。

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